
無料一人用朗読台本
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サク山チョコ次郎を食べていると、不意に涙が頬を伝った。 自分でもわけがわからないけれど、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちていた。別に悲しいことがあったわけじゃない。辛いことを考えていたわけでもない。ただ、呆けた顔でチョコレート菓子のサク山チョコ次郎を食べていただけだ。 なめらかなチョコ。 とろけるミルククリーム。 そして、サクサクのビスケット。 サク山チョコ次郎が織りなす糖分の三重奏に情緒が刺激され、思わず泣いてしまったのだろうか? ふと、サク山チョコ次郎のパッケージに視線を向けた瞬間――ああ、そういうことか。と、オレは全てを理解し、ぎこちない笑みを浮かべた。 パッケージに描かれたサク山チョコ次郎の姿に死んだ親父の面影を重ねてしまったのだ。 そう。 類人猿のような謎の珍獣・サク山チョコ次郎の姿は死んだ親父そっくりだった。 毛むくじゃらで、ずんぐりむっくりで、まぬけな顔で無邪気に笑う姿は親父の生き写しだった。 学校で嫌なことがあって泣いているオレに対し、親父はいつも優しく語りかけてくれた。お袋に内緒でチョコレートを買ってくれた。あの頃はまだサク山チョコ次郎は発売されていなかったけれど。親父がくれたチョコレートの甘さはもう思い出せないけれど。 親父のほっこりとした笑顔は今もなお、オレの網膜に焼き付いている。 その笑顔とサク山チョコ次郎の笑顔がオーバーラップし、反射的に涙を流してしまったのだ。 我ながら、ヘンテコな話だ。と、苦笑しながらサク山チョコ次郎をひとつまみ口に運び、ゆっくりと咀嚼した。 チョコレートとミルククリームのまろやかな甘さが混ざり合い、ビスケットの心地良い歯ごたえが組み合わさり、口内は果てしない多幸感に満ち溢れた。 なあ、親父。 オレはもう、おっさんだ。贅肉と加齢臭と息切れに悩まされる立派なおっさんだ。親父が死んでから随分と時が流れたからさ。おかげで、オレはもう親父が死んだ年齢を追い越してしまったよ。 まさか、オレが親父より年上になるなんてな。 追い越すつもりなんてなかったのにな。 なあ、親父。 ……なあ、親父。 何度、サク山チョコ次郎に語りかけても返事がくることはなかった。
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【タイトル変更案】
『サク山チョコ次郎にそっくりだった親父を偲ぶ』
『亡き父にサク山チョコ次郎を重ねて』など
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